STEP1|先週まで、あんなに続いていたのに
やりとりが、急に短くなりました。
前は、こちらが送った倍くらいの長さで返ってきました。予定の話も、向こうから出てきました。それが今は、一言で終わります。
思い当たることを、何度も探しました。あの日の返事が悪かったのか。踏み込みすぎたのか。それらしい理由が一つも見つからないまま、日が過ぎています。
嫌われたのなら、こちらも引きます。でも、完全に切れたわけでもありません。連絡すれば返ってはくる。ただ、遠い。その中途半端さが、いちばんきついところです。
三十代の女性からのご相談です。仕事を通じて知り合った相手と、四ヶ月ほど親しくやりとりが続いていました。ところが二人で会う話が出た直後から、返事が急に短くなりました。
彼女が知りたかったのは「脈があるのかどうか」でした。ですが、リーディングで見えてきたのは別のことです。その人が距離を置いたのは、彼女への関心が薄れたからではありませんでした。彼女を惜しんでいたから、近づけなくなっていました。
この記事では、その構造と、彼女がその後に取った行動までをお伝えします。
※プライバシー保護のため、内容を改変したモデルケースです。
STEP2|リーディングで見えてきたこと
セッションで最初に確認したのは、そっけなくなった時期でした。
彼女はこう言いました。「二人で会おうって話になった、その次の日からなんです」。関係が一歩進む話が出た直後でした。何かがこじれた形跡は、どこにもありませんでした。
次に思い出してもらったのは、その人が、その人らしくいられた場面です。LSHリーディングでは、これをユニークな出来事と呼びます。
一つだけでは、たまたまだったのか、その人の本体なのかが分かりません。三つ並べたとき、初めて共通点が見えます。
出てきたのは、こういう場面でした。
一つ目。以前、彼女が渡した小さな贈り物を、その人は使っていませんでした。「もったいないから」と言って、しまってあると話していたそうです。
二つ目。十年以上、毎朝同じ時間に同じ道を歩いていると言っていました。理由を聞くと「一度決めたから」とだけ答えました。
三つ目。学生時代から好きだという音楽の話を、何年も変わらず同じ熱量でしていました。新しいものに乗り換えることが、ほとんどない人でした。
この三つに共通しているものが、その人のイデアです。イデアとは、その人が本当に大切にしているものを指します。
三つの場面で、その人が守っていたのは同じものでした。大事なものを、長く持ち続けること。手に入れて終わりにせず、何年も同じものを大切にしていく。そういう人でした。
ここまで見えたところで、その人を縛っている物語が浮かび上がってきます。LSHリーディングでは、これをドミナントストーリーと呼びます。
その人の中にあったのは、こういう考えです。
近づきすぎると、失う。
だから、この人の生活はこうなっていました。気に入ったものほど、使わずにしまっておく。新しく見つけた店に、通いすぎないようにする。好きなものほど、減らすことを惜しむ。
人との関係も同じでした。仲良くなると、自分から少し引きます。誘われる回数が増えると、断る回数も増えます。深い関係の手前で、毎回止まっていました。
自分自身については、こう見ています。自分は、手に入れたものを維持できない人間だ。だから最初から、手に入れすぎないようにしています。
ここで、構造が反転します。
この人が守りたいのは「大事なものを、長く持ち続けること」でした。ところが近づきすぎると失うという物語が働いているので、長く持つ方法が「近づかないこと」しか残っていません。
大事に思う相手ほど、距離を取る。彼女がそっけなくされたのは、関心が薄れたからではなく、惜しまれていたからでした。
このまま続けば、親しくなる直前で毎回止まります。失うのが怖くて近づかなかった結果、失うものすら持てなくなります。
もう一つの物語、つまりオルタナティブストーリーは、ここから立ち上がります。
近づかずに守るのではなく、近づいても長く持てると知る。
そうなれば、この人は距離を取らずに関係を続けられるようになります。惜しまずに使いながら、長く持てるようになります。
STEP3|彼女にできたこと
彼女がやったのは、一つだけです。
① 距離が変わらない予定を、一つだけ入れる
彼女は、関係を前に進める提案を全部やめました。代わりに、いまの距離のまま続くことだけを示しました。
送った文面はこれだけです。
来月の展示、まだやってるみたいだよ。行けたら行こう。
会う頻度を増やす提案はしていません。二人で会おうとも書いていません。返事を急がせる言葉も入れていません。距離を変えない予定を、一つだけ置きました。
なぜこれが効くのか。
この人が怖いのは、近づくことそのものではありません。失うことです。関係を進める提案は、失う確率を上げる行為だと判定されます。
距離を変えない予定は、失わずに続いた実例になります。この人は、そういう実例を一つも持っていません。深い関係の手前で毎回止まってきたので、近づいたまま長く続いた経験がないのです。
② やってはいけないこと|気持ちを確認する
「どうしたの、何かあった?」と気持ちを確認するのは、逆効果です。
確認された瞬間、この人は「近づきすぎた」と判定します。関係を測る質問そのものが、距離が縮まった証拠になるからです。そして、さらに引きます。
同じ理由で、「私のこと、どう思ってる?」も聞きません。答えを求める質問は、全部この判定を起こします。
STEP4|その後、何が起きたか
彼女の側から、先に変化がありました。
そっけなくされた理由を自分のせいだと数える作業が終わりました。引かれる理由が分かったので、追わずにいられるようになったからです。返信の長さを毎回比べることも、なくなりました。
相手の側の変化は、三週間ほどかけて出ました。
返信が、少しずつ元の長さに戻りました。そして、その人のほうから次の予定を出してくるようになりました。以前と違うのは、予定の間隔が空いていることです。急がない距離で、続くようになりました。
こうした変化が起きるのは、イデアに沿った関わり方には、その人が抵抗する理由がないからです。守ろうとしているものを崩されないので、身構える必要がありません。無理がないので、続きます。
もちろん、全員がこうなるわけではありません。ここでお伝えしているのは、この構造の人にはこの関わり方が噛み合いやすいということです。
STEP5|あなたの場合は、どの物語でしょうか
今回のケースは、この相手固有のイデアとドミナントストーリーの組み合わせによるものです。
急にそっけなくなる理由は、これだけではありません。断ることで関係が終わると思っている人もいます。不満を言わずに溜め込んで、限界がきた人もいます。今の自分の状態を見せたくない人もいます。
外から見える形は、全部同じ「急にそっけない」です。それでも中身が違うので、噛み合う関わり方も違います。今回の方法を別の物語の人にやっても、外れます。
縛りの物語は無数にあります。目の前のあの人がどれに当てはまるのかを見立てるには、体系がいります。答えを知っていることと、読み解けることは別のことです。
あなたのケースを読み解いてほしい方は、担当のLSHプラクティショナーのセッションへ。
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